カイ・シデン
18歳、少尉
(いずれも一年戦争当時)
ガンキャノンパイロット
ガンダムは、メカものであると同時に、少年たちの成長を描いています。
メインは、アムロが普通のメカ好きの少年から、軍人へ、そしてニュータイプへと成長していく様ですが、アムロ以外のキャラも成長していきます。
若き艦長のブライト、ニュータイプのセイラとミライ、アムロには勝てないハヤト、アムロでなくハヤトに引かれていくフラウ、そして、その成長を支えて散っていったリュウ、スレッガーなどなど。
そんななかで私がここで一押しするのは、カイこと、「カイ・シデン」です。
ネーミングの由来は、日本海軍の戦闘機「紫電改」です。育毛剤ではありません。紫電改について語ると原稿用紙20枚分ぐらいはいけるので、ここでは割愛します。
カイといえば、セイラに「軟弱者!」と平手うちされてます。
最初にガンキャノンに乗ったときは、緊張でふるえながら「俺だって、俺だって」といいながらキャノンを打ちまくります。
映画で言う、ガンダム2の途中までは、単にひねくれた情けない奴です。
そんなカイを変えたのは、ジオンの女スパイ、ミハルとの出会いです。
ベルファストでホワイトベースを降りたカイは、町で出会ったミハルの家に立ち寄ります。ミハルがスパイであることに気づきながらも、幼い弟妹を養うミハルに、「左のエンジンが手間取っている」と教えます。
しかし、ホワイトベースへの攻撃が始まると、やはり気になったのでしょう。軍の身分証明書をだして民間人のバイクにむかい、
「止まれ!軍の者だ!止まれ!」
と叫び、バイクを借りて基地に戻ります。
ここが、彼が単なる「ひねくれた若者」から、ホワイトベース所属のパイロットに変化した瞬間です。
そして、修理があがったばかりのガンタンクに乗り込みます。
戦争を通じて人の成長を描く、というのはあまりよいことではないのかもしれません。エヴァンゲリオンしかり。
しかし、ガンダムがここまで支持される理由は、その「成長」にあると思います。
かつて某友人が、ガンダムについて、以下の点で画期的だ、とのたまっていました。
○武器、必殺技の名前を叫ばない。
○主人公がネクラ・オタク。
アムロの成長や、エヴァのシンジの成長に自分の理想や現実を重ねていた人は、自覚的、無自覚ともに多かったと思います。
しかしここはカイです。
成長したカイの見せ場は、4つあります。
1 ミハルの死の後の出撃。
「ミハル、俺はもう悲しまないぜ。お前みたいな悲しい子を増やさないためにジオンを叩く。徹底的にな。」
ガンダムで、ベスト3に入る名台詞です。
2 ニュータイプ談義。
現実を見て戦うしかない、という政治家タイプのブライトに対して、
「連邦のお偉方の盾となって死ぬのはイヤだ」
といい、黙っているセイラに対して、
「じゃあ、ジオンの後に連邦もたたくかい?」
と聞きます。一年戦争後、軍を離れジャーナリストになる彼らしいセリフです。
3アムロをねぎらうシーン
ア・バオア・クーの戦いの出撃の前、みんなに
「作戦は成功します」
といったアムロにたいし、出撃前アムロ、セイラ、カイの会話。
カイ 「アムロォ、さっきお前のいったこと…本当かよォ?」
アムロ 「うそですよ。ニュータイプになって未来のことがわかれば、苦労しません!」
セイラ 「アムロに、ああでも言ってもらわなければ、みんな逃げ出しているわ。怖くてね。」
カイ 「そりゃそうだな…逆立ちしたって人間は神様になれないからな。」
みんなの不安を受け止めるアムロと、すがる周りのクルー、その両者をカイらしくねぎらっています。セイラとの対比が見事です。
4 ア・バオア・クーから脱出するランチの上。
セイラがランチについたとき、みんなを誘導したアムロはまだランチにのっていませんでした。燃え盛るア・バオア・クーに向かってブライトが敬礼し、
「アムロが呼んでくれなければ…我々はあの炎の中に焼かれていた。」
というのも名ゼリフです。それを聞いてセイラは取り乱します。
実は、その後ろで、カイもバズーカを片手に敬礼しています。結果的にアムロは助かることになるわけですが、ここにも、カイの人間的成長が伺えます。
(訂正:カイはバズーカは持っていませんでした。すみません。持っているのは、ハヤトともう一人、マーカーではないかと。)
さあ、これでカイのファンになっていただいたでしょうか。
ならないよね。別に。
※ 今回は、通勤の途中で少しづつ書いたので、セリフ等はあまり原作を確認せずに書きました。しかし、GUNDAM FACT FILEの9で、ちょうどカイがあったので、それは参考にしました。
~ スーパースター列伝 Vol.3 カイ・シデン 完 ~